コーヒーの精製方法 ― ナチュラル、ウォッシュド、ハニーとは?

ウォッシュドコーヒー、ナチュラルコーヒー、ディカフェコーヒー…。コーヒーの専門用語を初めて聞く方は少し戸惑うかもしれませんが、その内容は思っているよりもシンプルです。

テイスティングカードに記載されている情報の中で最も気になるもののひとつが、そのコーヒーを育てた農家が選んだ精製方法です。通常は一語か二語でシンプルに書かれていることが多いものの、精製方法はコーヒーを飲むときの最初のひと口に大きな影響を与えます。

この記事では、コーヒーの精製方法についてコーヒーチェリーの構造に従って説明していきます。ここでチェリーの層を構成している単語をいくつか覚えておきましょう:

  • スキン - コーヒーチェリーの外皮。

  • パルプ - コーヒーの果実 。

  • ミューシレージ - 内側にある種子を包む甘くて粘着性のある物質。ハニーと呼ばれることもあります。

  • チャフ / シルバースキン - 焙煎中に剥がれる皮膜。

  • 種子 / 生豆 - コーヒーチェリーに含まれる2つの種子。


コーヒーの精製方法とは、コーヒーがチェリーから生豆になり、焙煎する準備が整うまでの工程を指します。精製方法の違いによって乾燥前の豆に残るパルプやミューシレージの量が異なり、焙煎後の味わいも変わってきます。コーヒーの精製はとても繊細な作業で、場合によっては生豆が加工中に変質し風味が変わってしまうこともあります。焙煎士はコーヒーを仕入れて焙煎する前に慎重にテイスティングを行い、求める風味を確実に引き出せるようにしています。


ウォッシュドプロセスコーヒー


ウォッシュドプロセスは、スペシャルティコーヒーロースターの間で最も人気のある精製方法のひとつです。これはピッキング後のコーヒーをパルピング(脱穀)してタンクで発酵させ、粘着性のあるミューシレージを軟化させて除去する方法を指します。その後、水できれいに洗い流して乾燥させてからロースターのもとへと出荷されます。

コーヒーからパルプやミューシレージの層を洗い流すと、とてもクリーンでキレのある酸味が特徴的なフレーバーが生まれ、ミディアムボディの控えめな甘味が感じられます。

産地によってはこの工程をさらに一歩進め、コーヒーを完全に洗い流すところもあります(フルウォッシュド)。この方法はウォッシュドコーヒーの精製とよく似ていますが、フルウォッシュドコーヒーはパルピング後にコーヒーをタンクに入れて発酵させるのではなく、ミューシレージを圧力をかけて洗い流したらすぐに乾燥させるためのパティオに移動させるのが特徴です。フルウォッシュドの場合、チェリーに産地の気候、標高、土壌から得られる十分なフレーバーが吸収されるため、パルプやミューシレージによる甘みなどの変化が風味にもたらされることはありません。一般的に、フルウォッシュドコーヒーはその産地がもたらす味わいを最も正確に表現していると考えられています。


ナチュラルプロセスコーヒー


ナチュラルプロセスコーヒーは、産地の持つ風味を最大限に引き出す最もシンプルで伝統的な方法です。コーヒーチェリーを収穫し、コンクリート板や高床式のベッドに並べ天日干しにして乾燥させ、その後乾いたスキンとパルプを引き剥がし中の生豆を取り出します。この作業は時間をかけてゆっくり行われるので、3~6週間ほど必要となることもあります。

ナチュラルプロセスのコーヒーの風味は、パルプの乾燥に大きな影響を受けることで、明るくジューシーでフルーティーな風味がしっかりとしたボディと甘みとともに感じられます。しかし、ナチュラルプロセスは一部の人にはクオリティの低い精製方法だとも言われています。果実の熟成、発酵、成熟のスピードがそれぞれ異なるため、風味が予測できないことがあるのです。一方で、ナチュラルプロセスがより風味豊かなコーヒーを生み出す可能性があると考える人も同じぐらい多くいます。


ハニープロセス / パルプドナチュラル


ハニープロセスとパルプドナチュラルプロセスの2つは実際にはほとんど同じで、産地によって呼び名が異なるものとして知られています。ハニープロセスはナチュラルプロセスとウォッシュドプロセスのちょうど中間的な位置付けで、コーヒーを天日干しで乾燥させる前に外側のパルプを取り除き、粘着性のあるミューシレージはそのまま残します。さらに、豆に残る果肉の量と一定の環境条件をコントロールすることで、希望の風味に仕上げることができる精製方法です。

ハニープロセスの場合、風味に深みを与えるためにミューシレージをそのまま残すので、精製されたコーヒーがまるで誰かがカップに蜂蜜やブラウンシュガーを入れたときのような味わいになります。フレーバーにはミディアムのボディ感と甘さがあり、ナチュラルプロセスコーヒーが持つしっかりとした風味とウォッシュドコーヒーの持つすっきりとした風味の間にあるような、絶妙なバランスの味わいを持ちます。


スイスウォーターディカフェ


これまでの歴史上、カフェインレスコーヒーとは薬品を使用することで風味を損なうことなくカフェインを除去したコーヒーのことを指しますが、スイスウォータープロセスはコーヒー生豆を水の入ったタンクに浸し、軽く加熱することでカフェインを除去する特別な精製方法です。

タンクの中で溶け出した成分を10時間かけて複数のカーボンフィルターに通すことでカフェインのみを除去し、フレーバーを含む他の成分は通過させます。その後、再びコーヒー生豆をタンクに戻してフレーバーと再結合させることで、スイスウォータープロセスの素晴らしいディカフェの風味が生み出されます。


コーヒーの精製方法がそれぞれ異なる理由は?


投資したインフラや環境条件、農園が築き上げてきた伝統によって、世界のさまざまな産地におけるコーヒーの精製方法は異なります。

水資源が豊富な産地では、高品質なコーヒーを安定的に生産できるウォッシュドプロセスを採用するケースが多く、コーヒーを洗うために必要な水を十分に確保できない場合は消費量を減らしてハニープロセスを採用することもあります。もしコーヒーを洗浄するための機械設備がないときは、適切なケアによって驚異的な風味を生み出すことができるナチュラルプロセスを選択することもできます。

どんな精製方法を選び、どうやってコーヒーの魅力を最大限に引き出していくかは、すべてその農園次第なのです。


最も優れている精製方法は?

私たちはコーヒーを調達する際にさまざまな精製方法を模索しています。私たちが行うすべての活動に共通しているのは、風味を第一に考えるということです。グッドブリューにはナチュラルのエチオピア、オールプレス・ブレンドとエスプレッソ・ローストにはウォッシュドのブラジルをブレンドしてみなさんにお届けしています。

コーヒーの旅におけるほとんどのステージで言えることですが、ベストな精製方法というのは存在しません。それはすべて飲む人の好みによるものだからです。そして、おすすめの精製方法があるわけでもありません。どの精製方法にも独自の強みがあり、さらにOur Coffee Galaxyで順番にやってくるシングルオリジンを飲むことで、さまざまなプロセスで生み出されたコーヒーの魅力を感じることができます!