20世紀初めからコーヒーの生産が盛んなブラジルは、もともと品質が不安定な産地として知られていましたが、今では世界中のロースターやコーヒーファンにとってスペシャルティコーヒーの聖地と呼ばれるまでに成長しました。

ブラジルのコーヒーの歴史 ― History of Coffee in Brazil

このストーリーは、1727年に隣国フランス領ギアナを経由してブラジル北部にコーヒーが持ち込まれたことから始まります。当時、主にコーヒーは植民地に住むヨーロッパ人によく飲まれていましたが、アメリカやヨーロッパでの需要が高まるとともにコーヒーの輸出量が急増し、20世紀初めには世界のコーヒーの生産量の80%をブラジルが占めるようになりました。

こうした需要の拡大は、21世紀に入ってもなお、世間に ”ブラジルのコーヒー産業は品質よりも量にこだわっている” という先入観を持たせてしまう結果へとつながりました。今でもブラジルは世界最大のコーヒー輸出国であり、現在は世界に流通しているコーヒーの40%弱を生産していますが、ブラジル産のコーヒーはスペシャルティコーヒーの中でもとりわけ高い評価を得ています。 

ブラジル国内のコーヒー生産地 ― Brazil's Coffee Regions 

ブラジル国内の7つの州には14か所のコーヒーの生産地があり、アラビカ種とロブスタ種が栽培されています。一般的に標高が高くなるほどアラビカコーヒーがよく育つとされていて、ブラジルで栽培される甘みと酸味が強いアラビカコーヒーには、北部のナッツやチョコレートボディのような風味のものから南部のフルーティーで酸の強い風味ものまで、実にさまざまな種類があります。

しかし、ブラジルの山々は他の近隣諸国とは異なり、スペシャルティのアラビカコーヒーの栽培に適した高さには達していません。最も標高の高い産地は南東部のサンパウロで、700 - 1400 masl の間でコーヒーが生産されています。これは他の産地と比べるとかなり低水準です。(隣国のペルーは1200 masl、コロンビアは2000 maslからアラビカコーヒーを生産していています)

ブラジルのコーヒー産業は、このような環境下でコーヒーを生産し続けることで自然災害への適応力を高めていき、世界のコーヒーの生産地でも活用されるような自然災害への対策方法を生み出しました。

ブラジルのコーヒー改革 ― Brazilian Coffee Innovation

ブラジルはいち早く収穫作業を機械化し、今にいたるまで機械による大規模な方法でコーヒーを収穫していることで知られています。基本的に標高が高い地域では、コーヒーの収穫時期になると手摘みでコーヒーチェリーをピッキングしていきますが、これは山の地形が険しく、コーヒーの木が育つ場所に機械を持ち込むことができないためです。しかし、ブラジルの緩やかな斜面では、トラクターや機械を使って熟したコーヒーチェリーを優しく揺り動かして落とすことで、膨大な量のコーヒーを収穫し輸出することができます。 

ブラジルのミナスジェライス州で最初に栽培されたアラビカ種であるカトゥーラ種は、現在では近隣の中米諸国でも幅広く生産されています。カトゥーラ種(ブルボン種が突然変異したことでできた小型品種)は、他のアラビカ種のコーヒーよりも小型なため場所を取らないことから、農地が少ない生産者に人気の品種です。中米では主にグアテマラ、パナマ、ホンジュラスなどの国で栽培されています。

ブラジルでのコーヒー製法 ― Coffee Processing in Brazil

ブラジルでは雨季と乾季がはっきりしているため、ブラジル国内のコーヒー生産者には、発酵の心配がなく生産成功率の高いナチュラル(ドライ)プロセスが好まれています。ナチュラルプロセスによって精製されたコーヒーは、収穫時期によって多少の違いはあるものの、熟した果実のような強い甘みが特徴的な風味へと仕上がります。ナチュラルプロセスやパルプナチュラルプロセス(またはハニープロセス)では、苦味が少なくしっかりとしたボディのコーヒーを精製できることから、エスプレッソのブレンドにもよく使用されています。

ブラジル国内の主要産地であるエスピリトサント、サンパウロ、ミナスジェライス、バイーアで生産されるコーヒーの大半は、ナチュラルコーヒーとパルプナチュラルコーヒーです。しかし、21世紀に入ってからはウォッシュドコーヒーやアナエロビック(嫌気性)ナチュラルコーヒーなどのさまざまな精製方法が生産者の間で試されており、常にコーヒーの世界の可能性が追求されています。  

ブラジルのスペシャルティコーヒーはキャラメル、ブラウンシュガー、トフィー、そしてチョコレートや甘いシトラスのような風味が特徴的で、シングルオリジンコーヒーとしてそのまま楽しむことも、他の産地のコーヒーとブレンドすることで絶妙なバランスの風味を作り出すこともできます。

ブラジルのコーヒー生産者 ― Our Producers in Brazil

オールプレスでは創業当初からブラジルのスペシャルティコーヒーを扱っており、今にいたるまで昔と変わらず私たちにコーヒーを届けてくれている生産者や、素晴らしいコーヒーを栽培している新しいパートナーとのつながりを築いてきました。  

ブラジルで最も長いつながりを持つのが、モジアナ州ヴァレ・デ・グラマにあるファゼンダ・サンタ・アリーナです。サンタ・アリーナは1907年からサンパウロの北東部でコーヒーを生産しており、現在も家族でコーヒー農園の経営を続けています。オールプレスはサンタ・アリーナと2008年からパートナーシップを結んでいますが、2008年からはクオリカフェックス、2009年からはストックラー、2013年からはカフェブラス、そして2021年からはスカフィナと新たにパートナーシップを結び、コーヒーの調達を続けています。

私たちはこのつながりこそがオールプレスの中心であると考えています。創業当初から現在まで、常に安定した風味を作り出すことができるのは、こうした長年にわたるコーヒー生産者とのつながりに支えられているからです。また、このつながりによって生産者に安定した収益がもたらされているだけでなく、私たちのパートナーやカフェのお客さまに向けて、信頼できる高品質のスペシャルティコーヒーを届けることができています。

オールプレスで楽しめるブラジルコーヒー ― Brazilian Coffee at Allpress 

オールプレスで扱っているブラジルのコーヒーはAllpress Espresso BlendA.R.T. Espresso Roastにブレンドされています。ブラジルのさまざまな土地で生産される多種多様なコーヒーのしっかりとしたボディ、ほどよい甘み、ほのかなシトラスの香り、そしてなめらかな後味が、ブレンドの中心となる基盤を作っています。

Our Coffee Galaxyでもブラジルのコーヒーを取り扱うことがあるので、ぜひチェックしてみてください。